「初陣」感想 その4(双璧についての雑感)

  back



ここからは、この舞台の双璧についての雑感を、思いつくままに書いてます。
全然まとまりがないので、読みにくいかもしれません、すみません><
なお、しつこいようですが、あくまで一個人の感想です、あとあくまで「この舞台の双璧」についてなので、ご了承下さい






こう見てくると、この脚色はマジすごいですね><
原作でセーフティーな場所に居続けるミッターマイヤーが究極のヨゴレな選択を迫られたらどうするかというifと、原作でいえば「ミッターマイヤー戦死の誤報を聞いて青ざめるロイエンタール」を思わせる、「我を忘れてうろたえるロイエンタール」が一挙に楽しめますからねー。

あと、この場面の忘れちゃ行けない前提として
「原作にない年齢(24〜5歳と若い)である」

だから原作開始時の28歳〜30代くらいの年齢なら、いろいろ経験も積んでて瞬時に適切な判断ができるかもしれないですけど、若い頃ですからまだ未熟っていうか。
このミッターマイヤーはただでさえ、「短気を起こすな」の台詞通りに、不正な場面を見かけたら、状況を考えるより先に手が出てしまう、直情径行なキャラになってますしね。
エヴァの名前を出されてカーーッとなって、何もかも吹き飛んでしまう、という単純さも裏付けられてる。





あともう一つ、このミッターマイヤーはあまりロイエンタールに頼ってないというか、そこまで心を許してないんです。
いや、ほら、さっきまで友達だって意識してなかったし(笑)……なんつーか、軍人同士のつきあい、いわゆる「戦友」ってそういうもんだと思ってるみたいな。
ミッターマイヤーのきまじめな性格上、軍の法規とかそういうのが先に来てしまうような感じ。
実際は無意識ではロイエンタールに信頼しているからこそ、安心していろいろ無茶な行動ができるわけですが、意識下ではその感情に名前をつけられないんですよ、にぶちんだから。
(それは恋……じゃない友情と呼ぶ)


だいたいこの舞台のロイエンタールさんのミッターマイヤーへの接し方は、かなり問題があると思われる。
ミッターマイヤーの鈍感ネタをところ構わず披露して、ネタにして弄って喜ぶわ、普段から憎まれ口ばかり叩くわ、「堅物の平民には刺激が強過ぎたか」とか言って女が絡む政治的な事わかんねえよな?的な態度で、よくミッターマイヤーこんな皮肉屋とつきあってんなって感心するぐらい。

まあ、この舞台のミッターマイヤーに限って言えば、からかわれてるのもわからないほどピュアで鈍感ちゃんって事なんすよね。
だから逆に言うとこのロイエンタールはミッターマイヤーの事、ほんと世慣れてない子供って感じに扱ってて、「こいつは俺が何とかしてやらなきゃ駄目だ」とか一方的に思い込んでるふしがある。

まあ実際このミッターマイヤーはあちこちに喧嘩売りまくって上から睨まれまくって、ロイエンタールさんがついててくれないとすぐに粛正されそうではあるんですが。

でもこの時の「約束」も、なんか一方的にロイエンタールがさせてて、何でお前がそこまでミッターマイヤーの人生に首突っ込んでくんだよ、て突っ込みたくなるんですが、まあでもミッターマイヤーもそれで満足してるし、二人が幸せならいいかって気にさせられる相性の良さ。

結局はロイエンタールさんの方がよりミッターマイヤーに執着してて、まあ、端からこの見たらロイエンタールさん「ミッターマイヤー、ミッターマイヤー」ばっかり言ってて、そんなにミッターマイヤーの事好きなの、ああそう、勝手にやっててよ、けっ……と回りからも思われてそうなんだけど、その執着っぷりを本人はあんまり自覚してなくても美味しいし、もしくは気づかないようにしてても美味しいですね。
ミッターマイヤーのために毎日日替わりで花言葉を考えてるくせに(違)、「あいつをからかうためにやってるんだ」的態度崩さないからとか、本当に素直じゃなさすぎ><

で、ミッターマイヤーの意識下では、こういう感じで醒めてて意地悪なロイエンタールが、自分のためにあれほど尽くしてくれるとはゆめゆめ思わなそうな感じ。
ま、ロイさん自業自得やね。

だからロイエンタールさんが何か言っても、受け取るミッターマイヤーとの間の認識に若干ズレがあるんじゃないかと思います。
ロイエンタールさん的な「何とかしてやる」は、「俺はお前のためならどんなことでもする、お前は体ひとつで嫁に来ればいい」ぐらいの勢いで、冷静なように聞こえるセリフの中に、実はかなりの執着も感じさせますね。
からかってるように見えて、実はミッターマイヤーの全存在、全肯定、それがロイエンタールさん。
牢獄でミッターマイヤーに「何とかしてやる」って言った時、ロイさんからするともうミッターマイヤーの全部乗せ、エヴァの面倒から政治工作から何から何まで俺がやってやるからお前は何もしなくていいよってつもりだったんだけど、そういうことちゃんと言わないから、ミッターマイヤーに伝わってなかったみたいな(残念)
で、ミッターマイヤーはエヴァの事まで面倒見てもらってると思わないから(あと単純短気だから)、エヴァ人質に取られたって聞いて、自分で飛び出して行く。

原作の信頼関係ガッチリできてる双璧なら、最初にエヴァの事も頼んでるだろうし、脅されても「ロイエンタールが何とかしてくれるだろう」でやり過ごしちゃうでしょうけど、この舞台の双璧は、まだそういう感じじゃない。

この辺、偽悪的なことはいらん事までペラペラ喋るくせに、不器用というか照れ屋というか、優しい言葉は足りないのがこのロイエンタールさん。
で、生まれたての雛鳥のようにロイエンタールを「友達」と認識しだしたばかりのミッターマイヤーは、もっと軽い感じというか、例えばロイエンタールが自身を危険に晒したりして他人のために何かやるとは考えてないみたいな。

だって、ロイエンタールさん、自分の必死なとこ、見事に見せないじゃん?
さっきまでミッターマイヤーがいなくなって、あんなにうろたえて、他に何も目に入らなくなってミッターマイヤー追いかけてたのに、ミッターマイヤーの前に来るといきなり髪かきあげてクールに突き放すような態度に戻っちゃうんですよ?
これで「俺の気持ちわかれよ」と言われても無理><

まあ、そもそもこのロイエンタールは、俺の気持ち分かれとも思ってないというか、俺だけが分かってればいい、みたいな所がある。
多分この話が終わった後も、鈍感ミッターマイヤーをからかい守りながらクールに生きていくだろうし、ミッターマイヤーはミッターマイヤーでロイエンタールさんに遊ばれつつ無意識にロイさんに甘えて、ロイさんの庇護欲を満足させながら生きて行きそう。


要するに、この舞台のロイエンタールの「全部言わせんなよ、恥ずかしい(照)」なスタンスと、鈍感ミッターマイヤーにはイマイチ通じてない感じは、実に双璧らしくていいですね(好き)。
「僕は照れて愛という言葉が言えず、君は近視、眼差しを読みとれない(さらばシベリア鉄道)」って感じ。





でも、この時のミッターマイヤーは、自分は死ぬつもりでいた所にかけつけてくれたロイエンタールに、めちゃめちゃ感謝して、ここでロイエンタールを見る目がかなりかわったんじゃないかと。
口でいくらでも「何とかしてやる」と言うのと、実際に何とかしてくれんのとじゃ大違いだし。
本気で、見返りも求めず他人の事思いやれる人間だって、初めて気づいたんじゃないかなと。
で、ロイエンタールの「何とかしてやる」という言葉を今度こそ信じて、自分の未来を委ねてしまう。

まあ、ロイエンタールがそういう部分をミッターマイヤーにだけ見せているのもありますが、ミッターマイヤーの方も、ロイエンタールが素直じゃなくて口で言えない部分とか彼の本質を直感的に感じ取れるような(心の目で見るのだ…的な)何かが備わっているのでありましょう。


この場面の最後
「すぐに迎えに行くから」というロイエンタールを呼び止め
ミッターマイヤー「卿に何かあった時は、この疾風ウォルフが何が何でもかけつける」
ロイエンタール「ああ、期待している」


このやりとりって、それまで「戦友」だった二人が真の「親友」になった瞬間で、感覚的に第二の出会いというか、本当に信頼しあえる仲になったんだなーって感じで感動的だし、更に将来の二人を暗示させる名場面なんですけど、何だやっぱり神脚本っすね(掌)


結局、ロイエンタールはミッターマイヤーの不器用さや、ひねくれた自分にはない真っ直ぐさ、ピュアさが気に入っててミッターマイヤーじゃないとダメ><って感じだし、ミッターマイヤーは、照れて言葉は足りないけど実は優しさや熱いものを秘めているロイエンタールを少しずつかもしれんが理解していって(そういう感情は自分にだけむけられているとも知らず……)、だから後でロイエンタールが窮地に陥った時みったんだけが弁護するわけで。




ロイエンタールさんがラインハルトに救助を求めに行った時、なぜそんなにミッターマイヤーを助けたいのかと問われ「ミッターマイヤーは気持ちのいい男です」の後に、「それに何があっても俺が何とかしてやると約束しました、先に約束を破ったのはミッターマイヤーの方ですけど(笑)」←こんな感じのセリフがありまして、自分はこの舞台でここが一番好きかもしれないです。

あれだけクールぶってて世慣れてるような顔をしているロイエンタールが、「約束したから」とか子供みたいな小さい事を言ったりしてんのが、何かいいんですよね。
もちろん半分冗談なんでしょうけど、半分ぐらいは本気でこの「約束」を信じてそうな所にキュン。
多分、この双璧の間にはこういう二人にしかわからない「約束」がたくさんあって、それもロイエンタールが勝手に思いこんでる(例によってみったんは気がついてない)ようなのもあるんじゃないかな。

そんでこの言葉を聞いたラインハルトとキルヒアイスが、思わずって感じで顔を見合わせてにこっと笑うんすけど、あれは「俺たちみたいだな」っていう笑顔なのと、あと、人間性を否定しているような軍の世界で、彼らより年上の冷静そうな軍人が「約束」とか子供みたいな事言い出すのが、彼ら的にもちょっと嬉しい、って感じなのかなと。

つまりこの舞台の双璧って、そういう自然と醸し出される、口に出さなくてもわかりあえている、見る人を幸せにするような心地よい信頼感ができあがっている。
でもその一方で口に出さない事でイマイチ伝わっていない事もある関係っていう不安定感を見せたりしてんのが凄いというか。




ちなみに自分がけっこうビックリしたのは、牢から出て来てんのに、自爆テロ事件が一段落ついたあと「んじゃ、牢に戻るわ」ってミッターマイヤーがあっさり戻ってった事。
(処刑されない限り一番安全な場所ということですが…)ミッターマイヤーさん、マジ法の番人。




(2013.08.07)

次は全体編。

  back