「初陣」感想 その5 全体編

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双璧部分が衝撃すぎて長くなってしまいましたが、この舞台、マジで全体的に素晴らしかったと思うので、簡単ですがその他のツボ部分を書き出してみます。
※あくまで個人の感想です
※ちょっと上からな感じですが、すみません><



この舞台が凄かったのは、いや、もはや神懸かってた、と言ってもいいんですが、登場人物が、全員完璧だったんですよ。
完璧ってのは、何だろう、一人だけ上手くて目立ってるとか、特定の出演者が突出しちゃってるとか、そういうのが一切なかったんですよね。
基本的な技術点がみんな高かったのは当たり前なんですけど、そのうえで、役者が演じてるって感じじゃなくて、「芝居してます」「セリフ言ってます」っていう感覚が一切なくて、もうキャラクターそのものだったというか、全員が役としてそこに存在してたというか。

舞台ってどうしても上手い人、個性の強い役が目立っちゃったり場をさらっちゃたりするじゃないですか。
今回だと、分かりやすい悪役のベーネミュンデ侯爵婦人とかは非常に強烈な役作りと芝居をしてたので、もし他の舞台だったら、ベーネミュンデ様一人だけ目立っちゃってたかもしれないんですよ。
「あの場面、ベーネミュンデが強烈で他がかすんじゃったよね」みたいに。
そういうのが一切なかったんですよね。
ベーネミュンデ様、確かに強烈で印象深いんですけど、一緒に芝居してたグレーザー医師とかリヒテンラーデ侯の芝居も込みで全部が凄い印象に残って、場面として完璧に成立してたんですよ。
ベー様、最後にラインハルトと絡むんですが、その時の受けるラインハルトも完全にラインハルトだし、相乗効果でもう脳裏に焼き付いて離れないみたいな。
これはもしベーネミュンデ様の役の人が一人で「あたしの芝居を見てーー」って感じでやってたら、こういう風にはならなかったんじゃないかと。
上手い芝居しようっていうんじゃなくて、完全にベーネミュンデ様になってラインハルトに向かっていって、受けるラインハルトも完全にラインハルトそのもので、皆で場面を造り上げてたというか。
個々が魅力的で、それが更にアンサンブルになってるから、もうちょっとないくらいあの空間が完璧に銀英伝の世界になってたんですよね。


確かに舞台って、上手い役者同士の演技合戦とか、アドリブ合戦とか、あといまいち未熟な役者さんの成長を見守るとか、そういうのが醍醐味じゃないですか。
でも、この舞台ってそういうのが全然なくて、作り手さんが完全に没我的になって、舞台のために自分がどうすればいいか、自分の持ち味をどう出せば舞台を生かせるかを知り尽くして参加してたって感じ。
5日の赤金双璧アフタートークで、役者さんたちが「会話劇を重視した」「稽古をとことんやった」って口々に言ってて、役者さんもだけど、演出の方が銀英伝の大ファンですごくこだわりを持ってきっちりつくって下さったみたいですね。
この「会話劇をとことん追求した」という所でなるほどと納得したんですが、そういう作り手のキャラクターへの愛情とか思い入れがすっごく出てたし、かといって思い入れだけだと一方的になって、ついてけない人は置いてけぼりをくらっちゃったりするんですが、そういう変な独善的な思い込みもなく、技術的なポイントとか客観的にどうやって伝えようかみたいなのはきちんと計算されたうえで、つくってあったような。
だからここまで満足度の高い舞台になったのは、演出家の方の功績も大きいんでしょうね。

ホント、見てて、間宮くんって感じじゃなくて、もう「ラインハルト様ーーー」だし、双璧は「そこに生きて双璧がいる」としか思えなかったし。
これが主要メンバーだけじゃなく、いわゆる脇のモブで何役もやってる人に至るまで全員そうだったんですよね。
だから多分、この舞台見た人は、特定の役者だけ、とか特定のキャラだけ好きになるんじゃなく、もう全部好きーってなるんじゃないかと思います(自分がそうだから)
もう上手い舞台とかそういうのとは別次元で、なんかすごい奇跡の舞台を見たような気がします。





双璧のことばっか書いてきましたが、ラインハルトとキルヒアイスの好きポイントも、ちょこっと言いたいっす。
個人的に一番好きなのは、惑星カプチェランカの吹雪の中で、自分たちを殺しに来た帝国軍のフーゲンベルヒ大佐を殺す場面なんですけど、たぶんこの場面に泣きそうなほど反応してたのって自分だけじゃないかと思うんですけど、本当にツボに入ったもので……。
二人で辺境の惑星で味方を殺してしまい、誰にも言えない秘密として葬り去るってのがね。
この時、いつも穏やかなキルヒアイスが「この男はアンネローゼさまを侮辱した…!」とか声を震わせながら相手に銃を向ける後ろ姿がね、キルヒアイスの純粋さと危うさとかが全部詰まってて胸キュンなんすよーー><
だって16歳なんですよっ。
16歳の少年二人が、本当に二人っきりで、誰にも言えない秘密を抱えてんすよー。
何て美味しいんでしょうか……!
また、ここの間宮くんと橋本くんの二人の、若さゆえの必死さとか透明感がすごいんです。

こういうの絶妙に描いてくれるから、この脚本家の人好きなのかも。

この場面の前に「俺の持ってるものは全部キルヒアイスのもの、何でもふたりで半分こ」みたいなラインハルトのセリフがあって、その一心同体感からのこれですから。
できあがってるくせに言葉が足りない双璧と対照的に、これでもかと言葉でお互いが大事と確認しあう赤金のケナゲな事。
でもやがてそんな二人の関係がずれていくというのがまた……(涙)
(他にも好きな所たくさんありすぎて困るんですが、多分この赤金は各所で絶賛されてるので自分のような者が長々書くのもアレなのでこの辺で)


あと田中圭のヤンさんは、いまいちやる気がなさげ?な所が逆にものすごいリアル感をだしてて、何もしなくても存在そのものがヤンだったという……このキャスト考えた人、天才。
他の方も全員ホントにすばらしかったです。
セットとか音楽の使い方とか映像とかも良かったし。

あ、ほんと皆さん声が凄くよかったです。
声聞いてるだけで、誰が誰かわかるぐらい。
間宮君とか若い役者さんも声がしっかりできてるんですよねー。
ミッターマイヤーのちょい高めの凛々しい声、ロイエンタールのトーン落としたエロめのベルベットボイス、キルヒアイスの誠実そうな声、ラインハルト様、16歳の時と今の使い分けの完璧さ……マジ、アニメリメイクしたら、このメンバーで声当ててほしいです><


あと、思ったのは、原作でちゃんと明記されてる体格、身長がちゃんと再現されてたこと、そこがこの舞台にこれだけ萌えられた原因かもしれないっす、いやマジで。
原作は外見描写に命かけてる作品だし、身長体格がおのおののキャラクターを代弁してるんですよね。
ぱっと見て赤毛ののっぽさんとか、小柄でがっちりしてて軽やかな疾風ちゃんとか再現されてるから、舞台あれだけのクオリティになったんじゃないかと。
いや、ホント、この舞台のミッターマイヤーの魅力は、あの少年のような体型が大きかったと言っても過言はないかもっす。
できれば次の舞台でも継続していただけますように……(悲願)



とにかく、この舞台についてならいくらでも語れちゃうんですが(やめなさい)、この辺でやめておきます。
もの凄い主観混じりの感想ですみませんでした.
長々とおつきあい下さりありがとうございました。

(2013.08.10)

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