「初陣」感想 その3(双璧編)

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この舞台最大の問題作、自爆テロシーン。

まず流れを確認しておきます


貴族の師弟を殴ったかどで投獄されたミッターマイヤー。
このミッターマイヤーのビジュアルが神がかってて困ります><
白いシャツをはだけ、大股でがっと椅子に座り(最初、椅子に足くくられてんかと思って焦った)、サスペンダー、前を見据える気の強い顔。
ロイエンタールが陣中見舞い(?)に訪れるんですが、こんなミッターマイヤーを見てしまっては、内心大変な事になってたのは想像に難くありませんね(微笑)

そこで例のやりとり。
ロ「短気を起こすな、はやまるな、俺が何とかしてやる」←それまでミッターマイヤーをからかってたのとは違い、優しく噛んで含めるような言い方(愛)
ミ「ああ……」
ロ「約束するな?」
ミ「約束する!」←仔犬。可愛すぎてロイエンタールさんが禿げるレベル。

投獄されてるとは思えない甘〜い雰囲気が漂ってます(困惑)
新手の拘束プレイかと勘違いしてもおかしくないレベルです。
まあ、とにかくこうして約束をして別れる二人。

何だ、何も困ってないじゃん……と一瞬思うのですが、しかし、陰では恐るべき陰謀が進行していた。
アンネローゼを亡き者にしようとするベーネミュンデ侯爵夫人一派が、ミッターマイヤーを刺客に仕立てようと企んでいたのである(なにこれ怖い)
舞踏会でベーネミュンデ様を諌めた剛毅さが、かえって敵の目に止まってしまったのである(悔)

そしてロイエンタールが去った後、牢に来たグレイザー医師(べー様の手下)が、ミッターマイヤーを脅しにかかる。
※会話は意訳となっております。

グ「あなたの事調べたけど、曲がった事が嫌いな正義漢で、軍人としての評判もいいっすね」
ミ「ゲスの言いなりになるくらいなら死を選ぶ男と聞かなかったか!(ぷんすか)」
グ「そうは言っても疾風ウォルフさんは大事な人を置いて死ぬような人間じゃないっすよね?………あんたの奥さんのエヴァンゼリン、人質にしといたから、アンネローゼを暗殺しなさいよ。逆らおうとしても無駄だかんね、ふはは!」

ショックで身をよじり「エヴァ、エヴァ、エヴァーーッッ」叫ぶみったん。
ああ〜、しかしどんな強気な態度でも、しょせんは拘束された身、手錠を解くことはかなわず……。
ミ「少し考えさせてくれ……」(がっくり)

こうして拘束を解かれ、厳重な見張りをつけられ小型爆弾を持たされたみったんは、ふらふらとアンネローゼ様の宮殿へ向かう。

なんか怪しいと思って引き返してきたロイエンタールさん、もぬけの殻の牢を見て呆然。
「ミッターマイヤーはどこへいったああああ!」
それまでの気障でクールな態度をかなぐり捨て絶叫、後を追います。


実は最初にこれ見たとき「なんじゃこりゃ??」だったんです。
まず宇宙でいちばん暗殺とかと縁がなさそうなミッターマイヤーが、いくらエヴァを人質に取られたからって、あ、暗殺????
いやいやいや、みったんそんな事しないでしょーっと。
なんじゃこの脚本はーーー(呆)
最初はありえない展開に、パニックおこしたのが正直なところです。

でも、でもですね。
冷静になって固定観念をはずしてみたら、何かすごいもんが見えてきた。

×原作のミッターマイヤーはそんなことしない
○原作のミッターマイヤーはそんなヨゴレな選択を迫られる場面がない



原作のミッターマイヤーは最後まで生きて帝国の未来を継承していくキャラとして、作者が汚さないようにしてるんすよね。
汚れ仕事もしないし敗北する場面もない(だからこそ出番の割にいまいち面白味のないキャラになっている……のは言わないお約束><)
原作のミッターマイヤーが、瞬時に何の迷いもなく正しい判断をするだろうという固定観念は、あれはセーフティーな場面にいるからこそで、悩む必要がないから迷いなく彼の正義を貫けるわけで。
でも、原作で縁のないヨゴレ場面にみったんがもし遭遇したら……。


要するに、ここで作りたいのは、絶体絶命、四面楚歌の状態、ミッターマイヤーがもはや死ぬしかないと思い詰めるような状況で、双璧の二人がどう行動するか、という場面なんすよ。

んで、最初の牢獄のシーンだと、割とのどかに約束なんかしてますが、ここ、別に絶体絶命でもなく、まあ何となく助かるだろう、みたいな雰囲気が漂ってます。

ちなみに原作だと変態拷問師を登場させたり、貴族たちにリンカーンされそうになったり(違)して、絶体絶命感を出してます(これはこれですごいシチュエーションですが)
それでも別に、というか、貞操を汚されたとしても、ミッターマイヤーは死のうとまでは行かないでしょう。
まあ、原作アニメ舞台と何度も拘束されて汚されまくってるしな、この舞台でも牢でやけにシャツをはだけさせられてるので、すでに散々エロいことされ済みと見た(確信)
原作じゃロイエンタールさんも「ミッターマイヤーが変態にやられるとこ見たいわくわく」とか言って鞭打たれるみったんを別室で見学して興奮してるぐらいだし。
あ、そうか、普段からロイエンタールさんに汚されまくって、開発済みですもんね…。
ロイエンタール「どんなに汚してもおまえは綺麗だ……」的な。

そういうわけで原作通りだと(すでにエロい体になってる)ミッターマイヤーちゃんはそこまで苦悩しないだろうし、ロイエンタールも喜ぶだけだし、と。

脚本家「だったら、違う罰ゲーム考えといたわ」


そんで、この暗殺強要っすよ。
最愛のエヴァと引き替えに罪もない人を殺さなければならない……確かにこれはミッターマイヤーにとってどうしようもない最悪の状態ですよね。
試される正義感。
ミッターマイヤーのハートはボロボロ……。

つまり、ミッターマイヤーはこんな事しない、じゃないんです。

ミッターマイヤーは絶対こんな事しちゃだめだーーっっと誰もが思う事を、あえて強要する。

普通だったら絶対に死にたいなんて考えない健康的なミッターマイヤーを、死んでしまいたいとまで思い詰めさせるシチュエーション。
いや、よくぞこんなドSな事考えつきましたわ(驚嘆)
この脚本の人、天才だと思う(掌くるっくる)


こうしてアンネローゼ様のところへ向かうミッターマイヤーを、会場中が固唾を飲んでみまもる中、ロイエンタールさんも後を追います。
「生きるべきか死ぬべきか」と放心したように客席をさまようミッターマイヤー(受難の神のような壮絶な美しさ)
後を追ってきたロイエンタールは、余裕だった態度が豹変!
必死な顔で、客席降りの場面でもひたすら舞台のミッターマイヤーを見つめているため(サービスで客席を見回すなんてことはしない)、通路から後ろの席だとロイエンタールの後ろ姿しか見えません><


そして再び舞台でミッターマイヤーに追いついたロイエンタールさん、ミッターマイヤーに張り付いていた見張りを回し蹴りで倒し、クールに髪をかきあげます。
ここで、さっきまでの切羽詰まった態度が一変。
ミッターマイヤーの前では、さっといつもの余裕なロイエンタールに戻ります。
何だよ、さっきまであんなに取り乱してミッターマイヤーしか見えてなかったのにっ><
ロイエンタールさんの男の美学が炸裂!

ここの台詞が、実にロイエンタールらしくて素晴らしいですよ(細かい言い回し覚えてなく大意ですみませんが)
「愛妻家のはずがもう浮気か」
ここでミッターマイヤーの手を取って小型爆弾を取り上げる。(この手を取る動きがエロい)
「ネックレスでもイヤリングでもない、こんなプレゼントじゃ振られるだけだ、早く帰れ」

脚本家、有能(掌……)。


そのロイエンタールに、ミッターマイヤー、ぽつりと、
「死ぬつもりだった……」

ここで、ずっと「俺のミッターマイヤーはそんなことしちゃだめだーーっ」と心で叫び続けていたロイエンタールさんも観客も、はっと胸を突かれるわけですわ。

そうだ、彼は「ゲスの言いなりになるより死を選ぶ男」じゃあないか……。

俺たちもっと、疾風ウォルフを信じるべきだったよ。
うん、そう、ミッターマイヤー「考えさせてくれ」って言っただけで「引き受けます」とは言ってないんですよね。
で、彼なりに悩んで悩んで悩み抜いて、でもどうしていいかわからないってところにロイエンタールさんが現れたという(なんて白馬の王子様…)

「俺が死んでもあとの事はロイエンタールが何とかしてくれると思って……><」というミッターマイヤーに、ロイエンタールさん渋い顔で「骨を拾うのはごめんだ、それよりこのあとの事を考えよう(的な台詞)」
※ちなみにエヴァの安全はロイエンタールさんが手下を使って確保済み。(有能)

そしてロイエンタール、二回目の
「短気をおこすな、はやまるな、俺がなんとかしてやる」

この時の「俺が何とかしてやる」の低いささやきがもう、もうねっ(///)
それまでの醒めてて偽悪的な仮面を取り去り、素のロイエンタールさんがミッターマイヤーへの思いすべてをこめたような言い方で、乙女なら誰しもズキュウゥゥゥゥゥンと来ること間違いなしです。
(※ただしニブちんのミッターマイヤーのハートにどこまで届いているかは定かではありません/笑)

こういう試練を一つずつ二人で乗り越えて、親友になっていくんですねー(まとめ)。

そして「これからの俺たちのために」ラインハルトに頼る事を決めたロイエンタールにミッターマイヤーは、
「あまり無理をしないでくれ」
するとロイエンタールさん
「心配するな、女と勝利は呼びもしないのに向こうからやってくる」
ここで顔を見合わせて笑いあう二人(幸せ)
(この台詞、宝塚版では唐突な場面で使われてましたが、本来はこれが正しい使い方、ようやくあるべきところに落ち着いた感じします><)


(2013.08.07)

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