砂の城 断章

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「ウォルフ、お願いだ、話を聞いて!」
「話なら後で聞くから……」
「今じゃなきゃ駄目なんだ!」
「どうしたんだフェリックス、駄々っ子みたいな事を言って、おかしいだろう……」
「よしてくれっ、そんな風な口を聞くのは」
「えっ……」
「ウォルフ、あなたにとって僕は何!? 取るに足りない子供なの!? あなたから見れば僕はいつまでも駄々っ子にしか見えないの!?」
「フェリックス、お前は18の男の子で、もう子どもじゃ……」
「そんな事聞いてるんじゃないっ、 知りたいのはあなたのことだ……答えてよ、恋愛の対象にもならないほど、ぼくは子供に見えるの!?」
「フェリックス………本気……?……本気で俺のことを……?」
「ぼくの言うことはそんなにおかしいことなの?答えてよっ」
「……わかった……正直に答えるよ……知ってるんだろう、俺と…お前の父さんの事は……」
「……………」
「似ているんだ、たまらない、どうしてそんなに似ているのか……顔だけじゃない、ちょっとした仕草も、俺を見る目も……まるで彼がそこにいるような気になる……」
「ウォルフ……」
「最初は似ているのが嬉しかった、だけどだんだん切なくなって……。もう一緒には暮らせない。神経がまいってしまう……」
「そんな……」
「お前のことは好きだよ、いとおしいと思ってる」
「ぼくを見るのがつらいの?…ロイエンタールに似てるから……?」
「ああ……」
「皮肉……だね……あなたのためなら何でもしたいのに……できるのは側にいないことだなんて……」
「離れた方が……お前は望み通りの暮らしができる……」
「望んだのはあなただけだ!」

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