原作アフター疾風艦隊

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君のいる場所



獅子の泉宮にあらたにつくられたミッターマイヤーの執務室を訪れたバイエルラインは、辺りを見回した。

「閣下、どうです、政治家に転身したご感想は」
「そうだなあ……俺に政治家が務まるかと心配だったが、結局は今までとあまりかわらんな、ベイオウルフにいた頃と……。ビューローもいてくれるし。新しい部下もよく働いてくれる」
ミッターマイヤーは苦笑いしながら肩をすくめる。
はにかんだ少年の笑顔はちっともかわっていない。
部屋の調度は変われど、人の出入りの多い部屋は軍司令部時代の雰囲気のまま、若い国をつくるための活気に溢れている。
「それに卿も変わらずこうやってちょくちょく顔を出すしな」
首席補佐官として仕えるビューローが冷やかしを入れる。

「全部ミッターマイヤー閣下のおかげですよ。ミッターマイヤー閣下がいる場所は、他の場所と違ってちょっと温度が高くて明るいんです」
あの頃と同じ光景……瞬間、懐かしい日々がバイエルラインの脳裏に浮かんだ。
「結局は場所じゃなくて、“人”なんですね、ねえ、閣下」
バイエルラインは、目の前のミッターマイヤーを真っすぐ見つめた。
……きっと、この人がいる場所ならどんな所でも。

「卿は今日はずいぶん真面目だな」
バイエルラインの隣にいたドロイゼンが声を立てて笑い、バイエルラインは照れて頭をかいた。
「いえ、これ前にミッターマイヤー閣下に言われた事なんです。……自分の今いる場所が嫌で別の場所に行っても上手く行くとは限らないし、逆に自分の今いる場所が好きなら、別の場所でも案外上手く行くんじゃないかって」
 

 
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